優しさは苦しさ。/映画『グリーンマイル』

映画『グリーンマイル』は、アメリカの死刑囚監房が舞台の物語である。看守のポール・エッジコムが死刑囚で不思議な力を持つジョン・コーフィに出会い、様々な出来事に遭遇する。

ここで私はポールについて考察したい。まずこの映画を見て際立ったのは、ポールが人間として内面的にいかに優れているのかだ。ポールは常に冷静沈着であり、相手を思いやり状況に応じて融通の利かせることのできる人物だ。パーシー・ウェットモアの傲慢で身勝手な態度にも激情したりせず、穏便に事が済むように気を配っていた。監房の中で唯一直接治療を受けていた人物であるという理由もあるが、パーシーがウィリアム・ウォートンを射殺した際にもジョンのことを信じ続けていた。そしてジョンの力を気味悪がったりせずに受け止めることができる。彼のような人間には中々出会うことが出来ないだろう。死刑囚監房が舞台のため、もちろん死刑(電気椅子)執行の場面も描かれ何人もの人が死んでいく。それにも関わらずこの監房に人間味があふれ温かい空気が流れているのは、ひとえに彼の人柄のお陰と言っても過言ではないだろう。

108歳になっても看守だった当時のことを気にし続け、長生きすることが神からの罰だと言う。これが私には知人や愛する人が亡くなっていくのを看取るという辛い状況の言い訳をしているようにも思えてしまう。ポールが長生きするのは、ジョンの厚意によってである。一連の出来事が彼にとってとても衝撃的だったのは理解するに難くないが、その状況そのものを罰と呼んでしまうのはジョンに対しても失礼になるのではないか。誰もポールのことは恨んでいないし、ジョンは寧ろポールが看守でよかったと思っているだろう。罰だと言い聞かせることで彼なりにこの状況を乗り越えていこうとしているのだろう。

ポールは優しい人間だ。優しいからこそジョンを何とか救いたいと思い、自分自身を責めた。ポールがもし他人に寄り添わないような人間だったら。ジョンの力を知ることも、長生きすることも、それによって苦しむことも無かっただろう。優しさは苦しさを招く。そんなことを思った『グリーンマイル』だった。